2022年6月のつぶやき

 

 

 ・このところラジオを、ノイズを発生させる装置として使っている。チューニングをずらすことで雑音が固くなったり柔らかくなったりする。落ち着く。

 

 ・プリンセス プリンセス『SEVEN YEARS AFTER』を聴いて、この曲のサビにめちゃめちゃ似てる曲があったのを思い出した。なんだっけな。思い出せる気がしない。アレンジが似てるとかじゃなくて「時間の風が恋のキズを白く染めて」の「白く染めて」の音の並びに聞き覚えがあるんだ。そのメロディをどこかで聴いたんだよなあ。しかもキーもそんなに変わらなかった気がする。その曲は多分歌モノじゃなくてインストで、ゲームとかアニメのBGM、だったような気がするんだよなあ。ああきもちわるい。誰か音楽に詳しい人に助けてもらいたい。あとこの曲はAメロの前半のメロディが少し不気味で怖い。

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 ・シェア電動キックボードをレンタルした。最高時速は15キロ少々、子どもが漕ぐ自転車に余裕で追い抜かれる。それでも車道を走らなくてはならない。おまけにバックミラーはリアル鏡じゃなくて鏡風のフィルム。後ろの景色はぼんやりと曇りきっていて、押せばへにゃりと歪んだ。心許なすぎた。じっとしてても動くのがラクとは思えたがそれは電動車いすにだって言えることだろうし、近いうちに死亡事故が間違いなく起こるなと思った。小さいタイヤで公道の端を走行するわけだ。転倒したところを後続車に頭を踏みつけられて即死。みたいな事故はそのうち起こるだろう。

 

 ・多分初めて足を踏み入れる市の住宅街に行った。生まれてから日本で暮らしているから、この国の、畑の草の生え方も、アスファルトの質感も、道の作られ方も建物の並び方もよく知っている。なのに目の前には今までに見たことのない風景が置かれていることが奇妙で仕方なかった。要素は既知なのに総体としては未知という、その、なんとも言いようのない違和感。しかしそれは全く不愉快ではなくて逆に快いぐらいの刺激。そんな時に限って天気が快晴だったりした。

 

 ・「今自分がいない——かつて訪れたことのある——場所は今現在どうなってるのかを想像する」ことが増えた。そこは今どんな天気で、どんな日が当たっていて、どんな風が吹いていて、どんな匂いがしているのか。もし自分がそこに瞬間移動したらどんな音楽を聴きたくなるのか。その土地のうえを流れゆく雲の形を想像したり、その近くに住んでいて、その風景を見飽きている人のことや彼ないし彼女の生活のことを想像したりしている。自分が一人しかいないことがもどかしくなる。自分が10人、いや5人いれば日本各地に散らばって、同時に別の場所の景色を見ることが出来るのに。私がいま肌に感じることが出来るのはいま私がいる場所の空気だけ。幾ばくかのむなしさがある。割りと常にある。

 

 ・何度も読んだ小説をまた読み返した。知っている文章を読むことは感じ方の再確認だったり更新の作業に近い。その作業は生活の質を高めるために必要な動作だ。

 

 ・大学時代のある先輩のことをふと思い出した。再履修の再履修の再履修、みたいな必修講義の掃きだめで知り合った、掃きだめの住人特有のやさぐれ感が全くない、おだやかな人だった。その学期の終わり頃まで私は彼女がひとつ上の学年だと知らずずっとタメ口だった。あるとき彼女の演奏を私は聴きに行った、彼女のバイト先だというライブハウスへ。冬だったと思う。ライブをやると聞いたとき私はチケット買いますよ、とか言った、気がする。でも確かただで招待してくれて、それが(私がチケットノルマというシステムの鬱陶しさを知っているが故に、先輩は私が聴きにくることを純粋に喜んでくれているのだなと感じて)嬉しかったから、そして彼女の音楽も胸にじんときたからライブ終わりにCDを買った。アコギ一本の弾き語りスタイルだった。ライブそのものは彼女がファンらしいミュージシャンとのジョイントで、彼女のあとにそのミュージシャンの出番があった。彼もまたアコギ一本の弾き語りスタイルだった。その手の音楽を全然聴かない私の心にもぐっと響く歌詞があったことを覚えている。買ったCDはパソコンでコピーして作るタイプのディスクで、その真っ白なつや消しの盤面に油性ペンでメッセージを書いてくれた。はたから見たら単なる素人の自主制作CDなんだけど、自分にとっては良い思い出の品のひとつ。そのCDは今でも家にある。にこやかでどちらかと言えば静かな雰囲気の人だったけど、でも多分それは親しくない後輩だからそう感じただけで、実際のところは少し話したぐらいでは中身が分からないような人だったんだろう。いや人間なんて皆そうだろうけど、特に私のいた大学にはそんな人が多かった。もしかしたら彼女も当時の私の周りに多く居た、生きることに不器用な人だったのかもしれない。などと根拠なくふと思った。今どこで何してるんだろう。私のことは全く忘れているだろうけど、元気にしてるといいな。