合唱曲ってたまに聞きたくなるよね

 

 当時からいいなと思ってはいたけど、歳いっても聴き返すとは予想しなかった。思い出補正の補正を強めてくれる作用もあるらしく、まるで自分が前向きで、澄んだ目をした少年だったような気がしてくる。存在しないはずの記憶みたいで怖いよね。でもそういうのは抜きにしても楽曲自体が純粋に美しい。成長途中にある人が集まってこれを歌う行為の尊さが、現在成長途中にある人自身には分からないのが、なんとも残念で若干のはがゆさを覚えるところでもある。物事はなかなかうまいこと運ばないものね。

 

 当時の私は中学生がやってはいけないとされていることのおよそ7割には手をつけていて、触法少年のビンゴカードにリーチが4列の犯罪者予備軍の、ヒネた嫌なガキだった。18禁のエアガンとナイフと思春期サイズの闇を小脇に抱えつつ、ママゴトレベルの厭世観をいっちょまえに育ててはいたけど、やっぱり音楽が大好きだったし、大勢でハーモニーを作るとぞくぞくしたものだった。一生懸命斜に構えていた他の奴らもきっと何人かは、何かを大勢で一緒にやるとそれなりに気持ちよくなれるってことを肌で感じていたんじゃないかな。女子の方はと言うと、他人に指図する快感とか喜怒哀楽によって他者を操作する術なんかを本格的に覚えていったことだろう。エロいことしか頭にない男子とは違って社会で役に立つスキルを校内行事を通して身につけていく。

 友人の中には合唱コンクールや合唱とか音楽に全く興味もない奴や、興味がないどころか嫌悪している奴も当然いて*1、私は全クラスにいるそういう奴らのところを回って全ての課題曲の楽譜を収集していた。

 

 

 今思ったけど「18禁」って大人になると言わんくなるよな。

*1:当然だ。というか9割がそうだった。声変わりと心変わりの真っ最中にある男子中学生がニコニコ笑顔でみんなと一緒に歌なんか歌えるわけがない