総括

 

 ・1番欲しいものは手に入らなかった。うまく思い出せないほど数年前の、それが舞い込むかどうかが決まる勝負はほんのひとときだった。手に入らなくなってからの時間の方が——言い換えるなら私が手に入れられなかった人になってからの時間の方が——圧倒的に長くて、そしてそれはどんどん加算されていく。こんなことは何度もあったような気がするが、そうではなくて実際は、1番欲しいものが手に入らなかったあるひとつの出来事について何度も何度も繰り返し思いを巡らせているだけだ。思い出すたびにまた新しくこじ開けられるために傷はいつまでも生々しく、これからずっと、生きることが終わるまで「~を得られなかった人」としてやっていくことが決まっていて、その状態の私を一番多く近く目にするのは他ならぬ私自身で、そのラベルの針は心に刺さって留められている。