頭は弱いけど意識は高い人のこと

 

・「意識が高い」若者。Twitterに急増する「意識高い系ギリ健」。

 Twitterで見る意識高めの若者ってすぐ発信する側に回りたがるけど、せめて30までは貯めろと思うんですよね。発信されたものを受け取って咀嚼する期間を充分にとれよって。誰かから聞いたことをすぐにそのまま発信するからどの人も薄っぺらくて他の人と同じようなことしか言わない。

 「なんとか×なんとか」*1みたいに、その人を表わすキーワードを自己紹介欄に書いてる人が多いけど、双方とものスペシャリストは一体どれぐらいいるんだよオイって訝しんでいる。医師免許も弁護士資格も持ってるダブルライセンス超人ならまだしも、私も含めた超人ではない人は二兎を追って成果ゼロの人になる危険性を抱えてる。

 例えば40歳の人が「20代でこの領域、30代でこの分野と、10年ずつ携わってきました」ってのは説得力もあるよ。でもさ20代で両方狙うのは睡眠が一切不要な人でない限り難しいと思うんだよ。どうなんでしょうね。

 

・結局のところ自己承認欲求を満たしたい。ちやほやされたい。

 彼らがすーぐに発信したがるのはなぜか。つまるところ人に何かを教えたりしたい、自分から波が起きてほしいからじゃないのかな。不特定多数の人から尊敬されたい。自分が何者になりたいかは見えてないけど、とにかく多くの人に尊敬される何者かになりたいのではないかなって思う。

 失業保険だか退職金だかで映画のチケットを大量購入した人が前に話題になってたけどさ、チケットの彼もこのタイプなんじゃないかなって。彼のブログを読む限りは思った。*2 直接話したことないから分かんないけどね。それから、特殊詐欺の受け子をやって逮捕された人のメモ(「お金持になる」「東京に出るともっと有名、お金持ちになる」「TVに出れる」「あきらめんな」「マイナス思考をなくせ」など、将来の目標とか心がけが雑多に書かれている紙片)も話題になってたけど、きっとそのメモを書いた人もこのタイプだと思った。顔すら見たことないから完全に憶測だけど。

 やりたいこと、得意なこと、自分の武器、どれもよくわかんないけど何者かにはなりたい。人に褒められたい、人をぎゃふんと言わせたい、女にモテたい、ネットニュースに取り上げられたい、テレビに出たい、YouTube何十万回再生されたい……などなど、何かしらの目標がある。でも「誰」になったらそんなハッピー状態になれるのかが分からないのではないだろうか。インフルエンサー?ユーチューバー?読モ?

 で、なんかキラキラしてそうな団体に入って都会のズル賢い人にお金をむしりとられたりする。ここで世界の真実を書き記しておきますが、面白い奴がいっぱいいる集団に入ったからって面白い奴になれる訳じゃありません。このことが頭から抜け落ちてる人がいっぱいいる。つまんない奴は基本的につまんないままです。少し脱線でした。

 

 そんな人はインターネットに接続せずに夜の街がないような土地で真面目にコツコツ働くのが結局いちばんなんじゃないかと個人的には思うんですよ。これが今回一番言いたいこと。我々凡人にとって一番手堅い(成功率が高い)手段はコツコツ長く続けることでしょう、たぶん(努力神話が崩れ去った今も人間そのものはそんなに変わんないんだから。コツコツにすがり過ぎるのもまた良くないけど)。ダメ人間ほど一発大逆転を狙いがち。逆転しなくてもいいんだってば*3。逆に言えば真面目にコツコツしかやりようがない凡人なんだから大穴を狙うなということ。3連単で10倍とかじゃなくて、単勝で1.2倍を狙って手堅く勝っていこうよ。安パイを取り続けていけよって。

 

・じゃどうすりゃいいのかって話。

 まず自分が凡人である事実(事実とまではいかなくても仮説)からスタートすればいいと思うんだよな。凡人仮説。チケットの彼も、多分だけど、自分がなりたい「何者」像を大人になっても固められなかった(=具体化できなかった)んだと思う。自分でもよく分かってないから、周りの人に流されたり、そのとき良いなと思ったものに目移りしてフラフラする。で、すぐにやめちゃう。

 若いうちは色々やって自分に向いてることを探すのも大切なことだけど、ある程度歳いっておさまってないといよいよ悲惨だと思う。*4 自分の心の中から聞こえてくる「なんかちがうんだよなあ」の声にばかり耳を傾けて、その「なんか」の解像度をあげないままだと、一生フラフラし続けることになりかねない。そうなると凡人に与えられた最強の武器「真面目にコツコツ」を捨ててしまうことになる。

 で、繰り返しになるけどインターネットを見ないこと!!これが最善策です。人の意見と過度の自分探しから離れて(自分のことを見つめすぎるのはマジで良くない。武道の達人とか詩人とかセラピストとかを目指すわけでもないのならデメリットしかない)、まず手を動かすこと。朝はちゃんと起きて顔を洗って歯を磨いて、仕事に行って、お昼ご飯をしっかり食べて汗をかいて、適度に疲れること。そして夜寝ること。やっぱりこれが一番の正攻法で、一番難しくて、一番尊いことだと思う。あなたはどう思いますか。

 

・一昔前の生き方に立ち返ってみる。

 昭和の人は図太くてタフだと折に触れて思う。その理由はいくつかあるだろうけど、彼らの人生に一番脂が乗っていた時期にはインターネットが無かった。そのせいで自分と人とを比較する精密さが適度に低かった。そのおかげで自分の現状と自分に対して「これでいい、まちがってない」とちゃんと思えてた。ってのが大きい要因だと個人的には考えてて。*5

 特に地方で育った頭の良さも運も才能も無さそうな人は、とりあえずはこの昔ながらの生き方を選ぶ方がよい*6、と個人的には思う。インターネットを見ないこと。人と比べないこと。

 

・結局のところ言いたいこと

 何にしても世界中の全員に、当人にとって心地よい状態で暮らして欲しい。私が思っているのは結局そういうこと。みんな生きてるだけでえらい。人を殺めないだけでもう百二十点。

 

 

 

 

*1:例:「マーケティング×ガーデニングで世界を変える!」みたいな。これはあくまで例です。実際にマーケティングガーデニングで何かやろうとしてる人がいたらごめんなさい。その人をさして言ったわけじゃないです。

*2:田舎から出てきた人とか頭の弱い人が、都会のズル賢い人に搾取される構造は昔からあったんだろうけど今はそれがインターネットで可視化されてしまった。見えてるばかりに全く無関係の私が勝手に心を痛めるようなことになってしまう。いい加減にしてほしい。←Twitterやめろ

*3:そもそも、普通に生きてるだけでえらいし、今負けてるとか思う必要もないので「逆転」の必要性もないと個人的に思う

*4:だから「意識高い系若者」であるうちは全然救いがあると思う。それが40にも50にもなって若者の仲間みたいな顔してるとどうなのさってなるんだけど

*5:図太くてタフな人だけが今も生きてるって生存バイアスも勿論あるんだけど

*6:何が誰にとって「よい」のかって話も、しだすとキリありませんが