サックスと癇癪のこと

 

 「Done is better than perfect.(完璧より完成を)」。名言だよね。じゃあ自殺しろってことですか。イライラするとつい思考が短絡的になってしまう。

 自分はどちらかと言えば我慢強い人間だとは思うんだけど、サックスとくにアルトサックスに関してはどこに出しても恥ずかしくない癇癪持ちだと自覚している。思い通りにいかなくてしょっちゅうイライラしてる。結構な頻度で楽器を叩きつけて壊したくなってる。*1

 楽器を手にしてからブランクも挟みつつ10年になろうかという段階なのに、びっくりするぐらい下手なうえに醜い音なのだ。saxophoneの神様に嫌われてるか、誰かに呪われてるかのどちらかだと思っている。ただ管体の鳴りだけは良くなっているので何年分かの積み上げはそこにはあるようだ。

 特に気に入らないのが音で*2、楽器本体やアクセサリー(マウスピース、リガチャー、リードなど)を変えても良い音にならない。私が奏でるアルトサックスは「風邪をひいたとき見る夢の中で1960年代前半のオーネット・コールマンが大きなヤカンを吹いている」みたいな音で、耳当たりが良くない。

 一昨年から師匠につくことにしたけどそれでも劇的に改善されることはなかった、当たり前だけど*3。あと考えられる原因はもう骨格とか気管支とか、お金で解決できない問題しか残ってない。つまり肉体を改造したり交換しないと解決しないわけで、ほとほとうんざりする。この国が銃社会だったら衝動的にショットガン自殺してた絶対。

 

 私の可愛い可愛いクソボケサックスちゃん。何度も破壊の危機を逃れている。私の最後の最後の理性によって、今日もどうにか綱渡り的に首の皮一枚で形を保っている。

 下位機種ではあるものの造りは良いため一生使い続けられる製品らしい。死ぬまで使うつもりでいる。それに上級モデルを手に入れたって良い音は出ないことも分かっている。

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*1:バットを折る野球選手やラケットを投げつけるテニス選手はよく見るけど、サックスを叩きつける管楽器奏者って今まで見たことない。村上秀一は良い音が出ない楽器を燃やしたことがあるらしい。令和のプレイヤーにもそれぐらいムチャクチャな人がいてもいいと思う。サックスには火がつかないので私の愛器は火刑を免れている。

*2:譜読みやフレージングに関してはやればやるだけ少しずつ、しかし確実に上達することが分かった。

*3:音色以外のこと、フレージングやアドリブについては得るものがとても多かった。もっと広いこと、例えば演奏に向き合う考え方や心構えも学べたので今の師匠について良かったとは思えている。