人間と性と不愉快さ

 

 たえず思うことだけど恋愛や性の話をしたがる人が多すぎる。心底うんざりする。他人がどういう異性(あるいは同性)に惹かれるか、パートナーはどんな人か、とかそんなこと知ってどうするんだ。

 人(しかもあまり親しくない人間)のパーソナルな事柄を話のネタにするって行為がそもそも卑しい。サッカーに全く興味ないのにスポーツバーから出られないみたいな息苦しさ、というか苛立ちがある。やりたい人だけで集まって勝手にやっててほしい。

 私は恋愛に興味があります、恋愛の話をしたいですって人はハートのワッペンかバッチを胸元につけてて欲しい。なんだったら圧倒的少数派であろう恋愛に興味のない人、話をしたくない人が白い丸をつける決まりでも構わない。

 

 人のプライベートをずけずけ訊き踏み込んでくる人って時々いるけど、そういう相手には出来るだけ場が気まずくなるような、つまり質問した人が幾ばくかの申し訳なさを感じてくれるような返答をすることにしている。根掘り葉掘り訊ねるのはリスキーな行為なんですよと教えてあげているわけで、私としては学習の機会を与えているつもりなのだ。これもひとつの愛情のかたちであろう。

  「ご家族は?」「……鬱病で自殺してしまいました」「恋人は?」「……自殺しちゃって(笑)」「ご結婚はされてるんですか?」「……車に轢かれて死んじゃいました」「お子さんは?」「子どもごと轢かれました」……死屍累々。