心理カウンセラーはどやこやいう話です

 

 心理カウンセラーの話。

 まず知っておいて欲しいのは”心理カウンセラー”ってのは誰でも勝手に名乗っていいということ。例えば”精神福祉保健士”や”保育士”なんかは資格がない人が勝手に名乗ることが禁じられています。でも”心理カウンセラー”はそうじゃない、つまり”写真家”とか”愛妻家”とかと一緒。勝手に名刺の肩書きにしちゃっても怒られません。

 「経済学部を卒業後、会社員時代にうつ病になり退職。回復後は自分の経験を活かしたいと考え心理カウンセラーになる」みたいな人がインターネット(Twitterアメーバブログなど)に沢山いるけど危険です。「自分がうつ病になった経験を活かし……」「自分/家族がうつ病不登校発達障害に……」活かせると思うな。

 こういう人は基本的に、心理学とかセラピーといったものに対して夢を見ているので危険です。心理学やそれに類するものとの出会い方が宗教体験に近いんです。*1 *2

 そういう人のほとんどは、人格と結びついて密着して離れなくなってどこからが自分でどこからが心理学なのか分からないほど結びついた「技法」ではなくて、頭で覚えた「知識」しか持ち合わせていないです。なので危険。

 で、なにがどう危険かっていうとそんな状態で他人様の心に関わっていくことが危険なんです。自分だけで考えを深めていく分には全くの無害だけど、彼らは傷を得た人と関わっていくからタチが悪い。他人様の心の奥の柔らかくて薄暗くて湿ったところを覗く(そのうえ覗いた後はきちんと閉じないといけない)にはあやうすぎる。「子ども外科医」みたいです。20歳になってから酒やタバコを始めた人みたいな青臭さがある。

 セラピストとしてやっていくうちに、たまたまうまくいくこともあるでしょう。でも何がどう作用してうまくいったか *3の振り返りの精度も低いと思うんですね、専門的なトレーニングを受けてないわけだから。もしかしたら振り返りをしないといけないということにすら考えが及んでないかもしれない。そうなると毎度毎度「たまたま」に賭けることになる。

 河合隼雄だったら「毎度毎度たまたまでええやないか」「僕らの仕事は半分ぐらいは賭けみたいなもんですよ」とか言うかもしれないが、私はそうは思わない。それでは良くない。うまくいかなかったらどうする?何かあった時に医療機関や公的機関につなげるパイプを持ってないのもまた危険です。カウンセラーに限らずリスクが発生した時に被害を最小限に抑えるのもプロの仕事です。そもそも仕事以前にアフターケアぐらいはやるのが大人の行儀ではないでしょうか。

 もし「日本なんとか心理学協会」みたいなところが勝手に作った「なんとかなんとか心理カウンセラー」みたいな資格を10万20万かけて買おうとしているのなら、悪いことは言わない、一旦保留にして、放送大学の傍受から始めなさい。質が高くてタダだから。

 テキストや講師の見栄えがよくても、カウンセリングを取り巻くのはキラキラした世界ではない。人に憎まれることも恨まれることも呪われることもある。これは私の持論だけど、人間が向けられて耐えられる恨みの量は一人分かせいぜい二人分まで。それ以上は耐えられるようには出来ていない。じゃあどうするのといったところも含めて、本職*4のカウンセラーは何年もかけて取っ組み合ってきてるわけです。だから彼らに勝てる訳がない。勝てないとはいっても、そりゃビギナーズラックや大金星は起こり得るだろうけどね。不安定要素の塊である人間同士の関わりなんだから。勝ち負けで判断できるものではないけどね。原則かなうわけがないということです。

 資格商法によって生み出された自称心理カウンセラーの仕事っつーのは「あなたは基本的に人から悪く思われたくないんだけれど、許せないことがあると強く言ってしまって、後から少し後悔するタイプではないですか?」「そんなあなたの前世はチワワです。ラッキーアイテムはピンク色の折りたたみ傘!今日も張り切って、いってらっしゃい!7時30分!7時30分!」ぐらいのもんですよ。それって「やきとりカウンセラー」とかと変わらないわけです。*5

 そんなセミナーや通信教育に金ドブするぐらいならこの記事を書いている私と話をするほうがまだいくらか人格が耕されると思いますよ。1時間2万5千円です。絶賛入会受付中です。ご興味ご関心おありの方はコメント欄まで。今なら金のカウンセリング枕と銀のカウンセリング貯金箱がついてきます。

 

 

*1:自然科学に行き詰まりを感じてオウム真理教に入った高学歴の人なんかもそうだったんだと思う

*2:そこからカウンセラーではなくて、医学部に入り直して精神科医になった、という人がいたらある程度は信用してもいいとは思うけど

*3:本当はそんなもん人間に分かる訳がないですが

*4:心理系学部大学院を出るなど(この「など」にまつわる話は詳しく説明されるべきだけど長くなるので今日はしません)して臨床心理士公認心理師の資格を取った人、と思ってもらえばよいです

*5:やきとりカウンセラーとは焼鳥心理学に基づいて人と関わるセラピストです。焼鳥心理学とは〈かわ/きも〉〈しお/たれ〉の2軸マトリクスで人間を理解しようとする学派です。この話は長くなるので別稿に。