『閃光のハサウェイ』ギギの朝ステーキは育ちの悪さを表している?

 

・ギギの朝ステーキは何を表しているのか

 ギギ・アンダルシアが朝からステーキを食べるのは育ちが悪いから(朝からステーキを食べる描写によって育ちの悪さを描いている)、というような感想を見かけたけど異議を唱えたい。あれは「若さ」あるいは「図太さ」「ズレた感覚」を表しているのだと私は思う。

 ホテルがテロ攻撃にあって逃げまどうさなか、焼ける人体を見てその臭いを感じたはずなのに、その翌朝にダバオ空軍基地の士官食堂でステーキを選ぶというところにはギギの「図太さ」「常識的な感覚とのズレ」がある。 *1

 どうせ軍の食堂はタダなのだから、と高そうなステーキを選んだのだろうか。いや、それは考えにくいだろう。味や価格(価値)を考えるなら空飛ぶ超VIPルームのようなハウンゼン356便の機内食の方がはるかに良いものが出されていたはずだ。だが、アテンダントが言ったように何度かある食事を毎回完食したのはハサウェイだけ。もし「元を取ろう」的な育ちの悪さ、意地汚さがあるのなら彼女こそ機内食を全て完食しているはず。普段からもっと良いものを食べているからこそ(他の乗客である上級官僚のように)機内食を残したりスキップしたわけだし、支払いを考えなくていい士官食堂であろうとただ食べたいものをただ食べたと考えるのが自然だ。

 仮に生まれ育ちが悪かったとしても、その臭いを身体の手入れや所作によって完全に消せなければ愛人(高級娼婦)など務まるはずがない。隣県から出てきて港区女子を自称するような女の子とはスケールが違う。

 ギギの素が出てしまったのは普段は一口に切っているはずのステーキを大きく切ったところにあるのではないだろうか、と私は考えている。心を許しているハサウェイの前だから、という以外にもカジュアルな服装が彼女の気を緩ませたのかもしれない。

 また、有識者の間では「ステーキ消失問題」についてケンケンゴウゴウの論戦が行なわれている。筆者は《何らかの原因によりギギの口腔内が真空状態になっていた説》を提唱しているが、これについては別稿で解説したい(しません)。

*1:もっと言うなら鎮圧に駆け付けた連邦軍機のコクピットに避難し、機内でハサウェイに「怖かったね」と(過去形で)感情を共有した時点で、ギギにとっての襲撃は終わっているようにも見えた。