西へ。
世界の果てみたいなところに来てしまった。
地方都市、昭和の香りが残る街並みを歩く。初めて来たはずなのに懐かしく思えて、涙が出そうになる。何故だろう。私にとっては新鮮な風景をうんざりするほど見ているであろう、ここに住む人たち全員と友達になりたくなる。しかしそれは不可能な願いだ。
商店街のカメラ屋さんに入った。ショーケースの片隅に新品のOLYMPUS Centurion(センチュリオン)が売られていた。新品で、だ。1996年に発売されたAPSのカメラだ。お店のおばさまは「(ずっと置いてあるということは売れなかったのだから)恥ずかしいことです」とおっしゃっていた。
シノゴのフィルムホルダーも買った。いま新品で手に入るのか分からないけど、新品で手に入れられたことが嬉しい。これも長期在庫品らしい。当たり前だけど箱に入っていてホコリひとつ付いていない。使うのがもったいないぐらい綺麗だ。リスコのとフェデリティのを買った。商品をポリ袋にいれたあと、地元の百貨店の紙袋に入れて持たせてくださった。親戚の家に来たみたいで気持ちがほっとした。店主ご老公にも色んな話をきかせてもらった。
百貨店の大食堂。とても良い雰囲気。
歩いて撮って歩いて撮ってした。どこへ行こうと私の写真は良くも悪くも、悪くも悪くも変わらない。
おもちゃみたいな真っ黄色の電車。
また乗った。本当に遠くへ来たなあ。ここにはどんな人が住んでいて、どういう暮らしをしているのだろう。何に笑って何に悲しんでいるのだろう。そんなことばかり考えてしまう。
銭湯。お風呂に入ったあと、店番をしていたお母さんと話し込む。NYと書かれたネイビーのキャップを被ってカメラに笑顔を向けてくれた。お客さんの忘れ物らしい。
帰る。私は私の住んでいるところに帰って、日常を再開させる。