タバコが美味しい場所

 

 わたくし(紙巻き)タバコ止めましたんでね。あんなもの百害あって一利なし。臭いはつくし、持ち物は増えるし吸えない所は多いし、臭いは付くし!喫煙者だというただそれだけで蛇蝎のごとく嫌われるし。冬場に毛玉だらけのざっくりとしたセーターを着るのが好きな自分にとって臭いの問題は重大だ。

 いや、実は一利ぐらいはあるんだよね。それも大きな一利が。ふーって吐いた煙って、あれ実は気化した「肩の力」です。この大きな作用があるから未だに「止めましたんでね!」って大きな声で言えない。時々気持ちがくさくさするときとか、どうも気が散るような時(気を散らす具体的な何かが無い時でも散って落ち着かないことがある)にリラックスしたくて吸うことがある。世の多くの喫煙者のように「タバコを吸うためにタバコを吸う」わけではない。そうじゃなくって自分を安定快適に持っていく手段の1つとして選ぶんである。

 

 先日人と話していて「三大タバコが美味しい場所」について語る機会があったのでここにも書き残しておく。
 1.新幹線の喫煙ルーム。外に広がる景色を楽しみながらの一服は割と何にも代えがたい。建物から建物へと飛び移り電車と並走する忍者の歩幅も大幅アップ。新幹線の車両ってあそこだけ窓の配置が変わってない?気のせいかな。高くて少ない気がする。外から確認してみたい。毎回し忘れる。在来線であろうと車内でぷかぷか吸えた時代を知らないけど、多分その頃の方がタバコうまかったんだろうな。どんな感じだったんだろうね。

 2.旅館のあのスペース。旅館のお部屋のあのスペースが持っている力がそもそも大きいのだ。なので何をやっても大体豊かな体験になり、心の栄養になる。2時間ドラマの凶器でおなじみ、重たいガラスの灰皿。旅館の名前がかかれたマッチ。タバコをマッチで吸うとうまく感じるのは、ビールはビンの方がうまい気がするぐらい不思議。まあでも詳しい理由をネットとかで調べるほど解明したい不思議ではないわ。風呂上がりの浴衣にタバコの臭いがつくのも、この時ぐらいは許してやろうという気になる。あのスペースは心の広さを臨時増設する働きも持っている、それは間違いないだろう。

 3.夜のパーキングエリア、サービスエリア。夜の高速道路や休息施設はそもそも状況が持つ力が大きい。自分の人生が続いている理由といっていいぐらい大きな存在だ。夜のPA・SAという状況は、旅館のあのスペースと一緒で大体の行為にブーストをかける(味わいとか質を増幅する)。人間にはそこにいるだけで力がみなぎってくる場所というのがあって、山とか神社もそうなんだけど。僕にとっては夜を迎えた高速道路が、精神安定・質オブ人生のワイヤレス充電ポイントの役割を果たしている。

 

 これは新幹線の喫煙ルーム。狭いのでいつまでも居座らないこと。

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