春ってこんなに春だっけ

 

 それはそうとしてすごいハッピーなんだけど。不思議だ。今回の春はいやに好意的だなあ。全然敵じゃない。自分自身が走ってるレールはいまいち煮え切らなくて煮詰まってる感じがするんだけど、その沿線はもうね、お花畑。キリン「氷結〈梅〉」を歓びの感情の呼び水として使用していた頃を思い出すような、奥底から楽しさがあふれてくる感覚。

 このシーズン、自然界は狂騒的で近寄りたくないぐらいなんだけどその一部になってる気がする。次から次から考えが湧いてきて文字にするのが追い付かない状態のちょい手前。あんまり頭の回転が速くなりすぎるとオーバーヒートして沈んでいくことになるから怖いんだけど。

 こないだ寝不足で運転してる時すごく夢心地だった。意識の明瞭度が下がって現実が刺さって来なくなり、精神を真綿で出来た優しい膜が包み込んでいた。そのまま、うららかな陽気に溶解していくかと思った。普段は鬱々しているのにうつらうつらしてた。うつらうつらと鬱々が結んでいる似て非なる「ら抜き言葉」関係って、その代表格はオーストラリアとオーストリアだよね。何言ってんだこいつ。

 初めてちゃんと花にレンズを向けたのは多分この春だ。菜の花ってすごいよね。あれ人間に与えられたボーナスアイテムだと思う。見るものとしても食べるものとしても一流。この両方を高い水準で満たすものって他にある?エンゼルフィッシュカクレクマノミも煮付けにしたら美味しいのかな?絶対マズい。ウサギは可愛さの割に美味しくない。ブタは美味しさの割に可愛くない。菜の花は過小評価されてる。

 春めいたモンブランケーキの上に桜の塩漬けがあしらわれていた。

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