雪と金閣寺

 

 雪が降り積もると金閣寺に行きたくなる。が、京都市にはほとんど雪が降らない。積もることは更に稀なので、行きたくな(って実際に見)ることはメッタメタに無い。そしてそれ以外の日にわざわざ行くことも無い。だから僕は通常時の金閣寺を知らない。ずっと住んでいるのに。本当の京都人(そんなものは架空の存在だ)は神社仏閣に行かないものなのだ、と時々うそぶく。けどいつでも行けるからこそ行かないところって誰にでもあるでしょう。

 (特に京都の)観光というのはそのほとんどがガイドブックの検証作業に過ぎない。正確に言うなら、ほとんどの観光客が事前情報の検証作業に陥ってしまっている。「これがあの、ナントカ神社/寺/址(跡)なのか……」というように。それぐらいなら家で日本史の資料集とかをぱらぱら読んでいる方がはるかに有益だと僕は思う。混雑してないし寝転がって見られるし。あとは湯豆腐とか日本酒とかお漬物を用意すれば、もうそこは完全に京都です。その瞬間からあなたの家は京都です。僕が認めます。

 雪が珍しい土地なので、どっと降り積もった朝は町中に小さな雪だるまがたくさん並ぶ。大半の雪道に慣れていないドライバーはノーマルタイヤを履いた車をゆっくり、おずおずと走らせる。大雪の日は町全体がのんびりと動く。僕はそれが大好きだ。夜になると積もった雪は窓の外を明るくさせ、音を吸収しあたりを静かにする。

 

 2017年1月に撮った写真です。2年前なんだね。人がめちゃめちゃ多くて、邪魔な木もあって、結構難儀した覚えがある。

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