夜に車で出かけること

 

 夜、車で走るのが好き。僕にとってとても大切な行為だ。夜のドライブによって人は人生の深いところにある滋味を覗くことが出来ると確信している。色んなことがあった日でも、何にも無かった日でも、ちょっと出ようかと思い立つ瞬間がある。そういう時は車も嬉しそうで、散歩に連れていってもらうときの犬みたいにわくわくしている。エンジンも身体の延長のように動いてくれる。昼にくらべて交通量の少ない国道や高速道路をゆるーっと流れてると心がゆすがれる。運転に適度に集中するから考え事も深くならない。ふと浮かんだ記憶も窓の外の街路灯と一緒に後方へ消えてしまう。高速道路を走ることも、たまにはある、これも贅沢とは言えない贅沢なんだけど。ひと気のないサービスエリア、ぽつんと光るアイスの自販機、トンネルに並ぶ青白いランプ(でも一番好きなのはオレンジ色のランプだ)、すべてが、防音壁さえたまらなく愛おしく思える。

 高速道路には時々小さな段差が並んでいる区間があって、そこを走るとコンコンと規則的な音がする。少しだけ振動もする。それが続くとトランス状態みたいなものの兆しをふと感じることがあって、走っている道の先がどこでもないどこかへつながっているように思えてくる。もしかしたら僕はどこか別次元へ逃避出来ちゃう入り口を探して飽きもせず走り回っているのかもしれない。

 

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