福井県に行ったこと

 

 去年か一昨年だったか、何度か福井県に行ったことを思い出していた。しみじみと良い記憶としてある。あわら市坂井市福井市鯖江市、越前市越前町南越前町敦賀市と、それぞれ短い時間ながら土地土地の雰囲気を感じてきた。東の方つまり岐阜県に近い地域は通過することもなかったのでいつか訪れたい。

 目立つようなランドマークや、一大観光地!みたいなスポットには出会わなかったけど、人がちゃんと生活している感じがあった。なんかこう、空気が心地よかった。日本海に面しているということもあり適度に鬱々としていて、ここで生まれてここで育ってここで死ぬ人がいるんだあと思いを巡らせると、感じ入るものがあった。もし私が福井県で生まれたらどんな人間になっていたんだろう。

 あわら市の温泉施設でおじいさんと会話をした。施設が出来てから毎日通っていると話してくれた。それが20年だったか30年だったか忘れたけど、その年月に感慨深くなった。彼は定期券みたいな入り放題チケットを毎月買っているらしく(毎日きてるので元をとっていることになる)、それから、若い人が身体をよく拭かないまま脱衣所に戻ってくることに困っているらしかった。おじいさんはたぶん昨日も入ったはずだし、今日も大浴場にいるはずだ。なんか、そういう名もなき市井の人の営みに触れると胸がちょっとだけいっぱいになる。どの人にも歴史があるんだな……みたいな気持ちにある。その施設は広く清潔でスーパー銭湯のいで立ちだったが、客たちは顔見知りばかりなのか挨拶を交わしたりしていてノーマル銭湯みたいなよい雰囲気があった。

 坂井市あわら市あたりの風景が大変気に入った。東尋坊三国温泉があるあたりだ。生まれたときから山に囲まれている私は、ちゃんとした平野をもしかしたら初めて見たかもしれない。ヨーロッパの、フランスの田舎の方もきっとこんな感じなんじゃないかな、とフランスに行ったこともないくせに確信した。空気はからっとしつつも海沿いっぽくもあり太陽光はさんさんと、見渡す限り畑と丘しかないような土地に降り注いでいた。つぎ行くときは越前松島水族館三国ボートレース場に行ってみたい。

 あわら市北潟湖のあたりは本当に世界の果てという体感があった。来るところまで来てしまったという感じ。ここから石川県、富山県新潟県と北に世界が続いているという事実を頭では解かっていても肌では理解できなかった。(それからあとしばらくしてから石川県金沢市に行ったときは小奇麗な都会で驚いた。人間は固まって住んでいるようでいて、日本中に散って住んでいるのだなと。けれど金沢市には固まっているようだった。)

 敦賀市内のショッピングモールに行った。地元の若者たちの遊び場になっているらしく、上階のフードコートでは制服姿の中学生がおしゃべりをしたりゲームをしたり宿題をしたりしていた。騒いだり周りの迷惑になったりすることもなく思い思いの青春を生きている様子で、大都会に出たりせずにいつまでも心がきれいなままでいてほしいなと勝手に思った。敦賀ではブックオフに入ってCDを買った。

 京都府舞鶴市でよくきかれる「弁当忘れても傘忘れるな」の箴言福井県でも生きていることを知った。それから石川県でも。ただいつも思うが傘は借りられても弁当は借りられない。いくら濡れなかったとしても空腹に陥ってしまうと気持ちが沈むのではないだろうか。それでもびしょびしょでお腹は落ち着いているよりはマシなのかな。

 

 海沿いの方はカニを模した様々な物品事物に溢れていてわくわくしたり心が和んだりした。これは道の駅に居たぬいぐるみのカニ

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